2025年5月8日、トヨタ自動車(7203)が2025年3月期本決算を発表しました。売上高は48兆367億円と円安効果で伸長した一方、原材料高や米国追加関税の影響で営業利益は前年同期比10%減の4兆7,955億円にとどまり、来期はさらに2割の減益を見込む保守的なガイダンスを提示しています。
ハイブリッド車(HEV)の好調が全体をけん引するものの、純電動車(BEV)の比率は依然1%台にとどまり、電動化とコスト逆風の綱引きが鮮明になった決算といえるでしょう。
決算ハイライト(2024/4/1-2025/3/31)
- 売上高:48兆0,367億円(前年比+6.5%)
- 営業利益:4兆7,956億円(-10.4%)
- 営業利益率:10.0%(前年11.9%)
- 親会社株主に帰属する当期利益:4兆7,651億円(-3.6%)
- EPS:359.56円
- 年間配当:90円 → 95円(来期予想、5円増配)
- トヨタ・レクサス販売台数:1,027.4万台(-0.3%)うち電動車比率46.2%(+8.8pt)
- 来期(2026/3期)会社計画:
- 売上高 48.5兆円(+1%)
- 営業利益 3.8兆円(-20.8%)
- 当期利益 3.1兆円(-34.9%)
通期実績のポイント
為替と価格改定が売上を押し上げ
円安効果と北米での値上げが寄与し、売上高は過去最高を更新。一方で原材料高と北米インセンティブ増でコスト負担が拡大し、営業利益は2桁減となりました。
ハイブリッドが牽引、BEVは依然1%台
ハイブリッド(HEV)が前年比+23.6%の444.1万台と堅調。BEV販売は14.5万台に留まり、BEV比率は1.4%。「プリウス」「カローラ クロス」など主力HEVの台数増が全体の利益下支え要因です。
セグメント別概況
地域 | 営業利益(億円) | YoY | コメント |
---|---|---|---|
日本 | 17,428 | -6% | 改善活動で減益幅を抑制 |
北米 | 12,301 | -12% | インセンティブ増、関税影響を吸収できず |
欧州 | 3,412 | -9% | CO₂クレジット費用増 |
アジア | 9,877 | +3% | インドネシア・タイの需要回復 |
金融他 | 4,937 | -15% | 金利上昇による調達コスト増 |
来期(2026/3期)見通し
- 営業利益 3.8兆円へ2割減を計画。
- 米国追加関税(4–5月分想定)で約2,000億円の減益を織り込み。
- 原材料高および研究開発費(ソフトウェア/EV生産ライン)増も響く。
- 販売台数はグループ1,101.1万台(0.7%減)を見込む。
- 重点投資:電動化2.1兆円・ソフトウェア1.3兆円規模を継続。
株主還元と財務健全性
指標 | 2025/3期 | 2024/3期 |
---|---|---|
ROE | 13.6% | 15.8% |
自己資本比率 | 38.4% | 38.0% |
Net Cash | 4.3兆円 | 4.9兆円 |
トヨタは 「安定増配」方針を堅持し、減益局面でも年間95円配を予想。自己株式消却(当期5200万株)も実施し、総還元性向は55%超に達します。
注目ポイント
- 営業利益率10%キープは業界トップ級。価格交渉力とバリューチェーン収益が効いている。
- EV投資と関税コストの板挟みで来期は利益調整フェーズ。株価調整局面は中長期投資家の仕込みチャンスか。
- 配当+自社株買いで合計還元5,000億円超。インカム狙いには依然魅力。
- 円高シナリオ(1USD=120円想定)では追加減益余地も。為替感応度は1円変動で営業利益マイナス460億円。
まとめ
最高売上を達成した一方、原材料高と関税影響で減益決算となりました。来期も厳しい環境を織り込む保守的ガイダンスですが、電動化・ソフトウェアへの巨額投資と高い株主還元を両立し、長期的な成長ストーリーを維持しています。
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